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【改訂版】白川克『会社のITはエンジニアに任せるな! ―――成功率95.6%のコンサルタントがIT嫌いの社長に教えていること』

手を握りあうビジネスマンたち
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ひさびさに本の紹介をしますね。今月は白川克『会社のITはエンジニアに任せるな! ―――成功率95.6%のコンサルタントがIT嫌いの社長に教えていること』(ダイアモンド社)です。

 

ファシリテーションを使ってプロジェクトを成功させるのが得意なコンサルタントが、“ITプロジェクトを成功させるための方法”をビジネスパーソンに教えますよ、という趣旨の本です。著者・白川さんのブログのファンだったおかげで、この本のことを知りました。

▼会社にとってITとは何なのか?あるいは、ITは道具ではない:プロジェクトマジック:オルタナティブ・ブログ
http://blogs.itmedia.co.jp/magic/2015/12/itit_1.html

表紙の見返しには「エンジニアに丸投げせずにITを会社に活かす方法がわかる」と書かれています。経営者ではなく、教育の仕事をしている私が、なぜこの本をおもしろがっているのか。

『会社のITはエンジニアに任せるな!』の目次

  • 第1章 なぜ、ITを会社の武器にできないのか
  • 第2章 成功率3割を9割に引き上げるためにやっていること
  • 第3章 異様に高いコストを下げる方法
  • 第4章 勘・経験・度胸に頼らない投資計画の立て方
  • 第5章 変革リーダーを組織的に育てる
  • 第6章 結局、我が社のITはどこを目指すのか
  • 第7章 意思を込め、長い目で育てよう
  • 第8章 そして、経営の足かせを武器に変える

なぜこの本を選んだのか

私が会社員をしていたときの、十年以上昔の体験が原因です。当時はCOBOLやRPG言語で作った汎用機系のシステムをVisual Basicの言語に作り直すのがトレンドでした。したがって、相当古い話と思って読んで下さい。社内システムをどう刷新するかで、経営陣と社内のシステム部が長らく話し合っていたことがありました。

【課題】

  1. 自社の情報システム部で構築した社内システムが老朽化し、使いにくい。
  2. しかし、一から作り直すには数千万円かかってしまう。
  3. 既存の業務パッケージを導入して、情報システム部にカスタマイズさせるのでは駄目なのか

経営陣の中で意見が分かれてしまったために、なかなか話が進まなかったようです。はたしてどちらの方が適切な判断だったのか、長らく疑問に思っていました。私の疑問を晴らしてくれたのが、この本。『会社のITはエンジニアに任せるな! ―――成功率95.6%のコンサルタントがIT嫌いの社長に教えていること』でした。

『会社のITはエンジニアに任せるな!』のここが役立った

システム開発するときには、予算内かつ納期を守ることが優先されます。したがって、できあがったものが会社の経営面で役立たないという出来事はふつうに起ります。こんなとき、どうするか。

余談のコラム「新国立競技場に見る、炎上プロジェクトの内情」は大変面白かったです。

  1. 何がゴールなのか不明確
  2. 投資の正当性が不明確
  3. 投資見積もりが上振れしても立ち止まれない
  4. すでに投資した少額にこだわって、計画を変えられない(コラムより抜粋)

という、白川さんのご指摘は確かにごもっとも。特に4.「すでに投資した少額にこだわって、計画を変えられない」は他のプロジェクトにもよくありそうなことではないでしょうか。責任の所在問題が発生しますし。「このプロジェクトを進めた場合、会社の経営にとって本当に役立つのか? 」という視点を忘れないようにしなくては、と参考になりました。

余談のコラム「プロジェクトリーダー(PL)とプロジェクトマネージャー(PM)」の違いも面白かったです。同じような意味だと思って使ってしまうことが多いのですが、『会社のITはエンジニアに任せるな! 』では別の役割として説明するスタンスを取られています。

著者・白川さんによると、

PMはその名の通り、管理者、つまり予算や進捗状況を把握し、遅れていたら調整するのが仕事です。しょっちゅうスケジュール表とにらめっこするような姿をイメージしてみてください。

(中略)

一方でPLとは、プロジェクトチームをまとめ、ゴールまで導くリーダーのことです。さまざまな問題を乗り越えながら、狙いどおりのITを予算と納期を守って作り上げるのが仕事です(前掲書 p.138)。

とのこと。

  • PMはマネジメントをする人(管理する人)
  • PLは会社の代表として決断したり、リーダーシップを取ってメンバーのモチベーションを上げたり、「経営・業務・ITの三者をつなぐ(前掲書 p.138)」人

ということなのでしょう。

読んだ結果、こうなった

本書に書かれていた、「ITプロジェクトの成功率は30%程度(前掲書 p.38)」という話にまず衝撃を受けました。約70%は失敗プロジェクトということですから・・・。ITプロジェクトに関わるときは、この事実をしっかり認識して参加しないと危ないな、と気持ちが引き締まりました。

そして、会社で使うITには“ツール型IT”と”プラント型IT”の2種類があること、“熱海の旅館化するIT”など、非エンジニアの私にとってもわかりやすい説明がされています。

“ツール型IT”と”プラント型IT”の定義・解説は、著者・白川さんのオルタナティブ・ブログでも解説されています。こちらもぜひご参考にされて下さいね。

参考:会社にとってITとは何なのか?あるいは、ITは道具ではない
http://blogs.itmedia.co.jp/magic/2015/12/itit_1.html

この本はITに苦手意識がある経営者、管理職、業務を担当するビジネス・パーソンを想定して書かれたそうです。そのため読者にITの知識がなくても、ITの本質がイメージできるように苦心されたそうです。

苦心の跡は“熱海の旅館化したIT”などの言いまわしから伝わってきます。説明の仕方の面でも、講師業の参考になりました。この本を熟読して習得できれば、どの仕事を受けて、どの仕事を断るのか、“成功プロジェクトを見分ける目”が育ちそうです。エンジニア以外の人が読んでもメリットがある本だと思います。

ちなみに本記事の前半に書いた「社内システムをどう刷新するか」の話は、伊勢神宮みたいに最新技術で全面的に作り直すのがベターだったのではないか、という結論に至りました。経営目線でのIT戦略を建てることが前提ですが。その理由が気になる方は、ぜひ本書を読んでみて下さい。

今回、紹介した書籍

追記:教育研究室に詳細レビューをUPしました(追記:2016.1.2)

Author Profile

片岡杏紗(あさ)
国家資格キャリアコンサルタント。JCDA認定CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)。元IT系講師。ITmediaオルタナティブ・ブログでは、「教育ICT」に関する記事を連載中。http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/
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