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【改訂版】男の娘の先駆け!? 『稚児今参物語絵巻(ちごいま)』が好き

十二単の女性
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私が卒論の題材を探したときに決めていたのは、お伽草子の絵巻を扱うこと。そこで、指導教官から奥平 英雄『御伽草子絵巻』(角川書店 1995)を貸していただき、見つけたのが『稚児今参物語絵巻』。

読んだときに衝撃を受けたのは、氷室冴子『新釈とりかへばや物語 ざ・ちぇんじ』にそっくりだったこと。このお伽草子も『とりかへばや物語』を参考に書かれたようです。氷室ファンの私は、「これを卒論に書きたい! 」と意欲がわきました。

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主人公が女装して懸想した内大臣家の姫君の女房になる設定もぶっ飛んでいます。しかも琵琶を教える口実で姫君と親しくなった後は、懐妊させてしまったのに、姫君をおいて一人で比叡山に戻ります。とんでもないストーリーだったのです。

絵巻をもとに制作された奈良絵本(お伽草子『ちごいま』)は、絵巻との微妙な違いがたくさんあります。突っ込みを入れながら読むことができ、こちらも大変おもしろいです。

あらすじは、おおよそ以下のようなもの。

【稚児今参物語絵巻(ちごいま)・あらすじ】

女装して姫君の女房に

主人公は比叡山の稚児。とても美しい美少年で、大僧正が大変かわいがっていました。ある日、比叡山の大僧正とともに内大臣家に行きました。東宮の妃になる予定の姫君は絶世の美女。姫君を垣間見したした稚児は、どうにかして姫君に近づきたいと思い、稚児の乳母に相談します。

乳母のアドバイスで、稚児は女装し、乳母の計らいで内大臣家の女房になることができました。稚児は今参り(=新参者)とあだ名をつけられました。

十二単の女性

琵琶が大変上手だったので、演奏を教える口実で姫君に近づくことができました。稚児が男と気がついていない姫君は、稚児に親しみを感じて、二人で添い寝するようになりました。他の女房たちが寝静まった所を見計らって、稚児は姫君に告白しました。

姫君は大変驚きましたが、稚児と恋仲になりました。ある日、姫君は生理が何ヶ月も来ないことに気がつきました。東宮への入内が決まっているのに妊娠してしまったのです。

姫君がまさかの妊娠!  東宮への入内はどうする!?

驚いた姫君は稚児に相談しますが、稚児は比叡山の大僧正がよんでいるので山に帰らなくてはいけないと告げました。稚児は大僧正に「病気療養のため、しばらく乳母の所で静養する」と伝えて、ひそかに内大臣家に使えていたのです。

稚児は姫君と和歌を詠んで別れを惜しんだ後、比叡山に帰ってしまいました。姫君は悲しみにくれました。おなかはどんどん大きくなってきました。そのうちに、稚児が天狗にさらわれた噂を耳にしました。
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※踊用品 お面 天狗 3285
から引用

妊娠した状態で東宮に入内はできませんし、父母に相談することもできません。姫君は思いあまって、ある日の夜中に一人で屋敷を抜け出しました。稚児を探して山の中をさまよいました。川に身を投げて死にたいとも思いましたが、川は見当たりません。

いつの間にか、木こりが木を切っているような山奥に来てしまいました。

尼天狗に救われて

そうしたら、粗末な家を見つけました。戸をたたいてみたら、軒と同じ高さの尼天狗が出てきました。いわゆる烏天狗の姿をした尼天狗が意外にも親切な人で、息子の山伏天狗たちに見つからないように姫君を厨子に隠してくれました。

息子の山伏天狗は尼天狗の所に戻り、 攫ってきた稚児を尼天狗に見せました。尼天狗は神通力で、稚児と姫君が恋仲であることを悟り、息子の山伏天狗に稚児を自分に預けるように説得しました。息子の山伏天狗はしぶりました。

最終的には「もし稚児を逃がしたら、母親でも殺す」と言って、稚児を尼天狗に預けました。

「もし稚児を逃がしたら、母親でも殺す」

尼天狗は息子に殺されるのを覚悟して、稚児を姫君を抱えて宇治にいる稚児の乳母の所に飛びました。宇治に着くと、尼天狗は忽然と消え、稚児の乳母は稚児が戻ってきたことを大変よろこびました。

見たことのない美しい女性も一緒だったので驚きましたが、乳母は比叡山の大僧正とも相談をして、「二人とも天狗に攫われて、一緒にいるうちに恋仲になった」という設定を考えます。比叡山の大僧正は内大臣家に行き、「二人とも天狗に攫われて、一緒にいるうちに恋仲になった」という話を大臣にしました。

稚児は男装して、すべてをごまかす

稚児は内大臣家の女房として働いていたので、秘密がばれないように男の姿になり、内大臣たちとも対面をしました。

平安時代の男性貴族

女装していたことがばれるのではないかとひやひやしましたが、なんとかばれずにすみました。東宮には姫君が死んでしまったことにして、今いる姫君はよその女性に産ませた子どもということで切り抜けました。

尼天狗の犠牲

そして、二人を逃がしてくれた尼天狗は息子に殺害されていました。正しくは、稚児がいる家に烏がやたらと集まるので、様子を見てみたら毛が生えた手を落としていったのです。

「尼天狗は本当に殺されてしまった」と悲しくなった稚児は、尼天狗と以前約束していたように手厚い供養をしました。その結果なのか、後日、稚児(?)の夢の中で、尼天狗が紫雲にのって兜率の内院に往生する姿が見えました。

稚児と姫君は秘密がばれることなく、夫婦になることができました。子どもたちや親類、縁者もみな幸せになりましたとさ。めでたしめでたし。

まとめ

この話のすごいところは、女装して姫君の女房になるのも驚き。姫君を妊娠させたのに、なんだかんだ和歌を詠んで比叡山に帰ってしまうところも驚きでした。しかも、秘密がばれないでハッピーエンドになってしまうのも強烈です。

尼天狗は天狗道を抜けるために仏道の修行を熱心にしていて親切だったからいいようなものの、稚児自体は男性としてどうなの? と言いたくなる言動。草食系男子だったのでしょうか……。

氷室冴子先生の『ざ・ちぇんじ』も荒唐無稽で明るく楽しい話ですが、お伽草子『稚児今参り物語』もなかなかのものです。稚児はもともと女性に見えるような姿をしているものなのですが、あからさまに女装をして女房になるあたりは、思えば”男の娘”の先駆けかもしれませんね。

参考文献


編集履歴:2014.8.16 23:17 画像の追加とあらすじの所に、小見出しを複数追加しました。23:35 文章を改稿しました。(句読点を打つ、一分を短くする、など)。題名に【改訂版】を追加しました。2014.8.17 15:27 冒頭のみだし「『お伽草子絵巻』のディープインパクト」を削除しました。2016.3.17 17:03 題名の『稚児今参り物語』の部分を変更。本文も『稚児今参り物語』から『稚児今参物語絵巻(ちごいま)』に修正。「絵巻をもとに制作された奈良絵本(中略)こちらも大変おもしろいです。」を追加。

Author Profile

片岡杏紗(あさ)
国家資格キャリアコンサルタント。JCDA認定CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)。元IT系講師。ITmediaオルタナティブ・ブログでは、「教育ICT」に関する記事を連載中。http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/
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