デル株式会社

障害者と支援技術「マルチメディアDAISY」2011年版

白い本
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今まではITmediaオルタナティブ・ブログやCNETブログにて「情報格差」「アクセシブルな図書」など社会的な問題をITの活用で解決できないかというテーマで書いてきました。

しかし、個人メディアでも「障害者と支援技術」の記事を書くことによって、より多様な方からの寄せ書き(意見や情報発信)が可能になるのではないかと考えています。

なぜ障害者と支援技術なのか

「障害者と支援技術」の話題は大学の研究室や福祉関係者、障害がある方からの意見・情報発信は多く見かけますが、その他の立場の方の意見は現状数が少ないように感じています。

そこで、技術者やデザイナー、主婦なと多様な立場のブロガーが参加しているこの場で記事の寄せ書きをいただければ、今後社会的な意味を持つブログメディアになる可能性があります。私からもiPhoneアプリやソーシャルネットワークの話題に加えて適宜、「障害者と支援技術」について紹介していきたいと思います。

マルチメディアDAISYについて

初回はDAISY XML規格より「マルチメディアDAISY」を取り上げます。画面と音声がシンクロした電子図書(カラオケのように話す本)は「マルチメディアDAISY」と呼ばれています。

ボランティアの間ではMMDと略して呼ぶこともあります。こちらは画面に文字も表示されていますので、ロービジョンの方、学習障害の方、知的障害の方、手に障害がある方、病気の方など何らかの理由で紙の本を読むことが困難な方が利用されています。

▼マルチメディアDAISYで勉強するディスレクシア(難読症)の子供1
http://youtu.be/zYT8iA3m_Iw

上記の動画から読み取れるように朗読している箇所が色つきのハイライトになり、音声とテキストがシンクロしています。マルチメディアDAISYは五感の多くを刺激するので、読みに困難さがない人が利用しても勉強に役立つのではないかと感じています。

マルチメディアDAISY図書の魅力は音声が読み上がられるのと同時に読み上げられている文章が黄色や青色の帯で色がつき、どの文章が読み上げられているのかがわかりやすいことです。「逐次読み」(ちくじよみ)される方は文字一文字一文字がバラバラに見えてしまうため文章の塊が見えにくいという困難さがあります。

逐次読み/たどり読みの例

逐次読み/たどり読みの疑似体験の例を以下に引用します。

みんなも えろほん きになって
佐藤慎次『通常学級の特別支援 セカンドステージ』(日本文化科学社) P,164 「2 たどりよみの体験」より

上記の文字は決していやらしい文章ではないですし、読者へのセクハラでもありません。LD(学習障害)やADHDのお子様などの中には、文字の区切りがどこだか迷ってしまったり間違ってしまう事があり、時にこんなふうに見えているという例です。

上記の文章は逐次読み/たどりよみのお子さんだと、

「ミ ン ナ モ エ ロ ホ ン キ ニ ナ ッ テ」

と一文字づつ読み上げられるのではないかと思います。

上記の文章にスラッシュ(/)を入れますと、

みんな/もえろ/ほんきになって

なんだか非常に読みやすくなりました。区切りがわかれば普通の文章なのですが、区切りがわからないと別な意味を持つ文章になります。うまく文字が塊で見えない子ども/大人にとっては、「えろほん?」と読み間違えて恥をかいてしまいかねない文章に思います。万一、人前で読み間違えたら間違えた本人はつらい感情を抱きそうです。

しかしスラッシュを入れたり、マルチメディアDAISYのような支援技術を活用することで読み書きに困難さがある人もスムーズに内容を理解し、生活も仕事も楽になる可能性が高まります。人によって困難さ・苦手なものは異なりますが、文字の塊が見えにくい人、視覚障害などの理由で読みにくい人にとってありがたい存在になります。

AMIS(アミ)で再生

ところがマルチメディアDAISYを作成する、再生するとなると一般ユーザには大変な面があります。日本語に対応した無料の作成ソフトを利用して作成された場合は、私が知るかぎりは「AMIS(アミ)」という無料再生ソフトを使わないとマルチメディアDAISY図書が再生できないのです。

そのため再生方法の講習を受けたことがない方、説明書を読んだことがない方からは、音声ファイルをダブルクリックしたら音声しか聞こえないとか、XMLのファイルをダブルクリックしたらインターネットエクスプローラが開いたけどわからなかったという声が出ました。

AMISという再生ソフトを利用しないと音声ファイルをダブルクリックしてWindows Media Playerで再生しようとしても、音声とテキストがシンクロしないのです。

マルチメディアDAISYを利用される方は、

  1. 財団法人 日本障害者リハビリテーション協会さまなどが実施する講習会に参加、
  2. ボランティアの方から指導を受ける
  3. 財団法人 日本障害者リハビリテーション協会さまのマルチメディアDAISY解説ページを見て独学で再生

などの方法で再生方法を習得します。

ただし、外国の有料ソフトを販売している会社に毎年ライセンス料を払えばAMISという再生ソフトを経由しなくても直接、マルチメディアDAISY図書を再生できるという記事がありました。ライセンスや有料の作成ソフトを販売しているのはDolphin Computer Access LtdというUK(英国)の会社です。EasyReader というソフト名でした。

有料ソフトは便利そうだと思いましたが、日本ではボランティアの方が無償で作成されている事例が多いのでAMISのインストール動画を以下に紹介します。

▼amisをwin7にインストールします。
http://youtu.be/twaU-df7bZs

おわりに

現在、日本ではDAISY3という規格が利用されていますが、次のDAISY4では動画も取り込んだ規格になるそうです。手話の動画を盛り込むことも可能になります。

DAISY XML規格はePubとの互換性も持ちます。そのため今後日本の電子書籍の世界で強いインパクトを与える存在になるかもしれません。

ボランティア団体の方が子どもの教育のために「マルチメディアDAISY教科書」を作成し、(財)日本障害者リハビリテーション協会さまのサイトから申請すると利用できるようになっています。

このようにアクセシビリティに配慮したマルチメディアDAISY図書は北欧やアメリカなど日本以外の先進国で普通に使われていますが、なぜ日本は広まっていないのかという問題が気になりました。

留学経験がある方に疑問を話したところ「外国では教育に特別なニーズがある生徒がいた場合、適切な個別支援を計画し、適切な対応を実際に行わなかった場合は罰せられる地域もある。

だけど、日本は法律で罰せられないからではないか」という感想をいただきました。

「なぜか」は私もわかりませんが、必要とする人がいる支援技術であれば必要とする人にまんべんなく届いて欲しいと願っています。


変更履歴: 2013.5.23 22:39 見出しを追加しました。

 

Author Profile

片岡杏紗(あさ)
国家資格キャリアコンサルタント。JCDA認定CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)。元IT系講師。ITmediaオルタナティブ・ブログでは、「教育ICT」に関する記事を連載中。http://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/
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